連続変化(第1種変化)
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不連続変化(第2種変化)
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安定したそれ自体は変化しない環境の中の変化(適応、進化)
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背景となるシステムの根本的性質や根本的状態が変化する(変貌、革命)
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「行動科学の展開、入門から応用へ」生産性出版、2000年より
現代のチームが従来のチームと異なる最大の点は、だれにも正しい目標がわからないことだといわれます。個人個人の限られた知識や経験だけでは、もはや持続可能な事業を継続することはできません。だからこそ、専門力を結集したチームが必要なのであり、お互いにアイディアを引き出しあう、新しい力が必要だといわれます。
複数リーダーのチームリーダーシップ
現代のチームには、既存の目標ではなく、気づきや新しい発見によって変革目標を掲げなければならないという点以外に、もうひとつ従来のチームと異なる点があります。それは、リーダーがひとりだけではない、つまり、全員あるいは多数がリーダーであるという点です。
環境も複雑で、変化や多様化も激しい現代は、メンバー全員が多種多様な背景を持ち、それぞれが卓越した専門力をもっています。こういったチームを、ひとりのリーダーが率いることは不可能であり、むしろ、全メンバーの特性や専門力を余すところなく引き出せるような「潜在力を引き出すリーダーシップ」がチームの成長や変化には不可欠だといわれます。
従来のチームと異なる点
従来のチームと異なる点
従来のチーム
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現代のチーム
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目標(なにをなすべきか)
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リーダーが掲げる(リーダーが知っている)
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なにがベストかわからないし、常に変革を求められる。
低レディネスでは、一部のメンバーの専門力で決めるしかないが、チームレディネスが高まるにつれ、複数のメンバーの専門力を出し合い、新しい発見をし、新しい目標を見つけ出す。高レディネスでは、全員で常にお互いに新しい発見を求め、それらの相乗効果に基づくチーム目標を決めていく。
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進行管理(どのようにすすめるべきか)
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リーダーが決める(リーダーが知っている)
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なにがベストかわからないし、常にシステムや技術は革新している。
低レディネスでは、一部のメンバーが進行管理を行い、レディネスが成長するにつれ、複数のメンバーが進行管理を共有し、高レディネスでは全員が進行管理を共有する。
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役割責任
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リーダーが結果責任を負う。フォロアーたちは低レディネスではひとつひとつの作業についての責任を負い、高レディネスになるにつれ遂行責任全般を負うようになる。
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全員が結果責任を負う。
低レディネスでは、メンバーが自分の役割についてのみ責任を負うが、チームレディネスが高まるにつれ、お互いの役割についても助け合い、チームとして責任を果たそうとする。
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コミュニケーション
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低レディネスでは、リーダーからフォロアーへ一方向的に、徐々に双方向的になり、高レディネスでは多方向的になる。
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低レディネスでは、1対1のコミュニケーションが多数あるというバラバラな状態。チームレディネスが高まるにつれ、1対多、多対多、とコミュニケーションチャネルが増えていき、高レディネスでは、全員が同じだけのコミュニケーション・ッチャネルをもつようになる。
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相互リーダーシップ
リーダーシップの働きを端的に表す表現に、「行く先を決めて、行き方を保証する」というものがあります。つまり、リーダーは目標を定めて、目標達成できるまで必要な指導育成を行うということです。
目標の内容や目標達成に必要な指導育成内容は、リーダーシップのコンテンツであり、目標を決めるというステップ、目標達成までの行き方は、すべて手順でありプロセスです。そこで、リーダーシップには、コンテンツを示すという行動とプロセスを示す行動があることがわかります。このようなコンテンツを提供するリーダーシップは「コンテンツ・リーダーシップ」、プロセスを提供するリーダーシップは「プロセス・リーダーシップ」と呼んでいます(「行動科学入門」生産性出版、2005年)。
チームは、全員あるいは多数が、程度の差はあっても、それぞれの分野の専門家だと考えることができます。どのリーダーも自分の専門力が必要とされる場面々々で、コンテンツを示す行動をとったり、プロセスを示す行動をとることになります。
チームは、全員あるいは多数が、程度の差はあっても、それぞれの分野の専門家だと考えることができます。どのリーダーも自分の専門力が必要とされる場面々々で、コンテンツを示す行動をとったり、プロセスを示す行動をとることになります。
メンバーの間でそういった相互作用を通して、チーム活動に必要なコンテンツやプロセスを提供しあい、チーム目標達成に近付いていくことになります。それぞれが、ある場面では、コンテンツのリーダーであり、ある場面ではプロセスのリーダーであり、また、ある場面ではコンテンツのフォロアーであり、ある場面ではプロセスのフォロアーになります。
このように、メンバーたちがお互いにコンテンツやプロセスの専門力を出し合い、達成に近付こうとする過程は、メンバーたちがリーダーシップをお互いに発揮しあっている「相互リーダーシップ」の状態だと考えることができます。
チームレディネスを知るための2つの軸は、「意思決定」と「コミュニケーション」ですが、相互リーダーシップに対するチームレディネスは、チームにおけるそれぞれの「共有度」だと考えられます。
チームレディネスを知るための2つの軸は、「意思決定」と「コミュニケーション」ですが、相互リーダーシップに対するチームレディネスは、チームにおけるそれぞれの「共有度」だと考えられます。
相互リーダーシップにおけるチームレディネス
R4
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R3
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R2
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R1
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意思決定(コンテンツ)共有度
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高
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高
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低
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低
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コミュニケーション(プロセス)共有度
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高
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低
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高
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低
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状態
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目標というひとつの方向に向かって、全員が情報を内部化させて団結している。
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目標というひとつの方向に向かって、それぞれが情報を共有している
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複数の目標に向かって、それぞれの集団が情報を共有している
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ばらばら
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相互リーダーシップのリーダー行動
相互リーダーシップ
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S4
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S3
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S2
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S1
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フィードフォワード
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フォローアップ
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アジェンダ
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フィードバック
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意思決定共有リーダーシップ
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低
新たな目標や役割責任を見つけ出す
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低
目標や役割責任を確認しあう
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高
情報提供とともに、目標や役割責任の調整を行う
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高
目標や役割責任の具体的情報を提供する
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コミュニケーション共有リーダーシップ
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低
団結して
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高
共有して
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高
グループごとに
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低
メンバーごとに
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低レディネスの場合は、少数のメンバーだけがコンテンツ発見やプロセス管理にかかわっているかもしれませんが、チームレディネスが高まるにつれ、多数のメンバーが相互協力してコンテンツやプロセスにかかわってきます。もっともチームレディネスが高い状態では、プロセスは全員が共有しているので、強いプロセス・リーダーシップはもはや必要なく、全員が新しいコンテンツ発見に注力しながらも、一丸となって目標達成に向かっていることになります。
相互リーダーシップを、以下の記号を使って示したものが次図です。
C:コンテンツ・リーダーシップ
P:プロセス・リーダーシップ
C:コンテンツ・リーダーシップ
P:プロセス・リーダーシップ
cp:コンテンツ・リーダーシップもプロセス・リーダーシップも弱い
cP:コンテンツ・リーダーシップが弱く、プロセス・リーダーシップが強い
Cp:コンテンツ・リーダーシップが強く、プロセス・リーダーシップが弱い
CP:コンテンツ・リーダーシップもプロセス・リーダーシップも強い。
この矢印で示された図から、チームが一種のネットワーク組織であることが分かります。ネットワーク組織においては、情報へのアクセス力があるメンバーに求心力(ネットワーク・セントラリティ)が生じるといわれますが、情報力や専門力など特にパーソナルパワーにもとづく力が重要になると考えられます。
*パワーについては、「行動科学の展開、入門から応用へ」(生産性出版)をご参照。
*ネットワークセントラリティについては、「企業家とクレディビリティ」(慶応経営学会)をご参照。
情報や専門性が重視されるネットワーク組織では、相互リーダーシップによって構築される未来への変革コンテンツ、つまり、「チームアジェンダ」が求心力になると考えられます。メンバーたちがお互いに気づきや新しい発見ができるよう働きかけあい、お互いに強く成果を出したいと感じあい、立ち遅れているメンバーがいればサポートしたくなるような、相互リーダーシップを発揮しあいたくなるような、そういうチームアジェンダであればあるほど、チームレディネスも高くなります。