リーダーシップは、目に見えるようで(?)、目に見えない現象である。
「目に見える」と感じるのは、リーダーシップの強さや大きさが、社会的地位、権力や暴力など、今流行りのパワハラなど、自分にかかわってくれば目に見えるどころか、身体で感じるからである。
しかし、その自分が感じた「リーダーシップ」は、だれでも同じように強く感じたり大きく感じたりするだろうか? 自分が痛い思いをする「自分事」ならリーダーシップは「目に見える」、しかし、自分が傍観者で他人事ならリーダーシップは「目に見えない」。
そこで、「意識的調整」という概念を考えてみる。
組織の境界と構造
リーダーシップは「働きかけ」であると、行動科学ではとらえられているので、働きかける「範囲」を前提としている。この範囲を、働きかけの影響が及ぶ「組織」ととらえることができる。
その「組織」を定義するために、「組織」の内側と外側をどのようにとらえるか。組織の内側と外側を区別する「組織の境界」について、次のような考え方がある。
オープンシステムとしての組織の特徴としての3つの主要な考え方(桑田&田尾,1998):
- 厳密な組織概念における環境: 組織に影響を与えるすべての参加者、その他の行動主体、諸要因は組織にとって環境を構成する。組織は参加者が提供する行動のシステムであり、参加者は組織に含まれない。
- ドメインとしての境界: 組織均衡に参加する参加者、参加者から組織が受け取る貢献、組織が参加者に支払う誘因という3つの要素によって決定される空間がドメインと定義される。
- 意識的調整の及ぶ範囲としての境界: 意識的調整が及ぶ範囲を内部環境、その範囲外にある諸要因を外部環境とする考え方。(例)企業組織に貢献活動を提供する参加者は、投資家(株式会社や証券市場のような制度的クッション)、労働者(雇用契約という権威関係にもとづく安定的な取引関係)、供給業者(市場を介すので外部環境として扱われるが、特異性が高いため不完全競争市場である場合が多い)、顧客(意識的調整範囲外の外部環境)である。
- 組織と利害関係者との関係を決めることであり、
- 組織と環境の制度的境界を決定することであり、
- どのようなメカニズムで資源取引が調整されるのかを決めることであり、
- 市場メカニズムか階層的権限関係によってかを決めること、
それらの要因を考慮して、自分アジェンダ®では「意識的調整の及ぶ範囲としての境界」を「自分ネットワーク」という組織としてとらえる。(⇒このことは、「資源獲獲得は、自分の意識的調整によって実現する」を意味する)
つまり、組織の意識的調整が及ぶ範囲は、
- 内部環境としての投資家、労働者、供給業者
- 外部環境としての、顧客
「自分ネットワーク」という組織の意識的調整の及ぶ範囲は、内部環境として
- 投資家:まだ手に入れていない未来の資源を投資してくれる人々(=資源投資者)、
- 労働者:実際に動く担当者(=実行に参加してくれる人々、自分)、
- 供給業者:現在手に入れられる資源を提供してくれる人々(=資源提供者)
- 資本の概念の変化(※)により、顧客という厳密な境界はなくなった・・・と考えられる。顧客=自分ネットワークからオファーを受ける者
※資本の概念の変化
顧客を含む企業家のネットワークは、企業家が提供するオファーを取り引きするプラットフォームを創り上げる。そのプラットフォームにおいて、取り引きされるのはオファーであり、商品やサービスではない。ネットワークにかかわるすべてのメンバーが、オファーの取引にかかわり、ある時は売り手、ある時は買い手になる。メンバーは、オファーに対する愛着によって、オファーのアップデートを可能にし、またさらなるオファーの活用を行う。メンバーは開発者であり、使用者である。その意味で、顧客も企業家のネットワークの内部環境に含まれると考えられる。("Blur", Davis & Meyer, 1999)
Davis & Meyer, 1999 |