状況対応リーダーシップ®(S.L.理論®)による「S.L. セルフ」のすすめ


気持ちいい状態、納得している状態とは?
いろいろ口実を言わないでいい状態とは?

自分が安心でき落ち着く状態はどんな状態でしょうか。



「行動科学入門」(生産性出版)第3章より抜粋


本当の意味でやる気がでるときとは、どんなときだろうか?楽しいことをやるとき、気持ちいいことをやるとき、「やりたいと思ったこと」をやるとき、やる気は出てくる。自分で「やりたいと思ったこと」をやるときは、どんなに小さなことでも、充実感があり、満足感を得られる。満足とは、欲求が満たされたときに感じる気持ちである。自分を満足させるには、なにかを達成するたびに「達成した」と充実した感情を感じることが大事である。そのためには、どんなに小さなことでも自分の「個人目標」をひとつひとつ意識することが役立つ。ひとつひとつの個人目標を意識していると、それぞれを達成するたびに満足感や充実感が得られる。このような“自己満足”の積み重ねは、同時に、「達成した」自分に対する評価を高めてくれる。
ところで、「やりたいと思ったこと」という表現は誤解をうけるかもしれない。これは、リーダーシップ研究の枠組みでいえば、ビジョンにあたる部分であり、行動科学ではあまり内容に踏み込んで説明されない部分である。先に説明した VTR モデルでいえば、「ビジョン、使命、方向性アイディア」などの「どこをめざすのか」にあたる部分である。状況対応リーダーシップ・モデルでは、「やりたいと思ったこと」がどのようなものであるべきかを示す説明として、「要求ではなく必要性」という表現を使っている。いいかえれば、見境なく好きなことだけ、やりたいけことだけをめざすのではなく、自分に必要なこと、課せられたことは何かを見極めてめざすということを意味している。たとえば、食事をするとき、好きだからといって気の向くままに甘いものだけ、脂分の多いものだけ食べるというのではなく、自分の身体にいいもの、必要なものを見極めて食べる必要があるということである。 S.L. セルフで、「やりたいと思ったこと」という場合は、自分が成長したり、満足感や充実感を感じるのに必要なこと、そのために自分に課せられたことなどを意味しており、いいかえれば「自分の“ために ” やるべきこと」であると理解していただきたい。
さて、序章で「組織目標のとらえ方」について考えた。同じ「組織に所属する」という行動でも、「組織目標のとらえ方」ひとつで、自分の満足感は変わる。自分の個人目標を意識して、自分がなぜその組織に所属したのか、組織目標は個人目標に対してどのようにかかわっているのか、などを整理してみると、自分が何に満足していて、何に不満を感じているのかが見えてくる。何が不満の原因かわからずに漫然と不満を感じていると、不満の感情が増幅してしまう。何が不満で何が満足なのか、その原因は何なのかなどがわかってしまうと、次には行動するしかないので、その結果、軌道修正して所属する組織を変えるという行動に出るかもしれないし、今の組織こそ今の自分には最良の選択だと判断し、その組織への所属を継続するという行動に出るかもしれない。どちらの行動をとったとしても、自分なりの意思決定なので納得するという意味で、自分の満足感は変わる。
行動科学で考えると、このように不満や満足の対応策を状況や他人に求めるのではなく、自分の行動に求めることで、満足感の制御(コントロール)をすることができる。「刺激←→人間(欲求)→行動→成果」で考えると、まず、「満足する」という成果を得たいので、そこから逆に見ていく。すると、自分の欲求、つまり個人目標は変えられないので、状況や他人という刺激を自分で選ぶことになる。
図表 1 : S.L. セルフのリーダーシップ図
fig1

やる気を出すには、あるいはやる気を出させるには、個人目標が何であるかを意識すること、あるいは、意識させることが役に立つ。個人目標を意識して、それを最大限に活かすために、組織目標を有効に活用するのである。個人目標を意識していれば、「自分」という軸を持ちながら、組織目標にかかわることができる。個人目標を意識するための方法が S.L. セルフである。
S.L. セルフの基本的な考え方は、 2 つの点を除いて状況対応リーダーシップと同じである。異なる 2 つの点とは、①リーダーの役割をプロセス・リーダーとコンテンツ・リーダーの 2 つの役割に分解すること、②プロセス・リーダーとフォロアーは同一人物であること(コンテンツ・リーダーは多くの場合、外部の者だが自分自身ということもある)、である。
図表 2 :リーダーの役割
fig2
たとえば、カレーライスを作るという作業で考えてみよう。まず、小学生の A 子ちゃんが初めて「両親のためにカレーライスを作ろう」と決めたとする。今までお母さんが作るのを見てきて、作ってみたいなぁと感じていたし、両親を喜ばせたいとも感じていたとしよう。これが A 子ちゃんの欲求から生まれた個人目標であり、リーダーは A 子ちゃんである。リーダーにはカレーライスを作る作業全般の管理をするプロセス・リーダーと、カレーライスの材料の集め方、買い方、作り方、コツ、味や盛り付けの好みに詳しいコンテンツ・リーダーが必要である。プロセス・リーダーは A 子ちゃんであり、そのプロセス・リーダーの指示を受けて行動するのも A 子ちゃんである。 A 子ちゃんは自分で「カレーライスを作る」と決めて、自分で実行するのである。ただし、 A 子ちゃんはカレーライスを作るのは初めてなので、なにからなにまで教わらなければできない。レディネス 1 ( R1 )である。そこで、コンテンツ・リーダーからの指導・支援が必要になる。 A 子ちゃんは、カレーライスの材料の集め方、買い方、作り方、コツなどをお母さんから教わろうと考えるであろう。味や盛り付けの好みに関しては、お父さんがうるさいのでお父さんに聞くかもしれない。お母さんからもお父さんからも、こと細かく教えてくれる教示的スタイル( S1 )が必要である。お母さんの教え方が早すぎたり、十分でなかったりすると( S2 以上のスタイルで不適合)、よくわからなくなったり、失敗したりしていやになってくるかもしれない。そういう場合は、お父さんがおいしそうに食べている姿を想像して、「がんばるぞ」と自分に協労的行動を与えるかもしれない。あるいは、お父さんに味や盛り付けの好みを聞きにいったときに、テレビに夢中になっていたお父さんに邪険に扱われて、くじけることもあるかもしれない。そんなとき、お母さんが「一緒に作りましょう」といって力強い指示的行動や協労的行動を出してくれ、また自分を奮い立たせることができるかもしれない。こんな風にして紆余曲折を経て、なんとかカレーライスができ、両親と一緒に食べることができたとしよう。 A 子ちゃんにとって、この経験はいろいろつらいこともあったけど満足のいくものだし、なにより達成できたことがうれしい。そうなれば、自分への評価も高まるし、次のチャレンジにも向かいやすくなる。
A 子ちゃんの S.L. セルフは、次表にようになるだろう。
図表 3 : A 子ちゃんの S.L. セルフ
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S.L. セルフの考え方は、プロジェクト・チームの考え方に似ている。ある目的のために集められた部門横断的なプロジェクト・チームを思い浮かべていただきたい。各部門からそれぞれ専門知識や専門スキルをもった人材が集められ、それらの専門性を駆使して特定の目的が達成される。達成までのプロセスでは、完成全体図を描いているプロジェクト・マネジャーが責任を持って管理をする。必要なときに必要な専門知識や専門スキルをもった人材を動かし、プロジェクトを完成に向けて進むよう采配を振るう。特定の専門知識や専門スキルを必要とする作業については、その専門知識やスキルを持った人材が、コンテンツをどのように進めるべきかの方向性やアイディアをもっており、必要に応じてプロジェクト・マネジャーに進言する。専門知識やスキルをもたないプロジェクト・マネジャーは、専門家に確認しながら最終決定を行う。こうして、ひとつひとつの専門作業のコンテンツを埋めていきながら、全体のプロジェクトが完成していく。この場合、プロジェクト・マネジャーは全体のプロセス・リーダーであり、専門知識や専門スキルでプロジェクト・マネジャーに不足するコンテンツを補う専門家たちは、コンテンツ・リーダーとなる。
図表 4 :プロジェクト・チームの例
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S.L. セルフは、自分の個人目標の達成をめざしたプロジェクトだと考えられる。 S.L. セルフでは、プロセス・リーダーは自分自身、コンテンツ・リーダーは自分を指導・支援してくれるサポートである。コンテンツ・リーダーは、状況対応リーダーシップでいうところの指示的行動と協労的行動を提供してくれるリーダーたちである。先輩、親、友人、先生、上司、同僚、仲間、部下など、自分にコンテンツの補強をしてくれる人々である。リーダーが人間に限られていないことも状況対応リーダーシップと同じである。マニュアル本、インターネット、書籍、などの指示書も立派な指示的行動を与えてくれるし、もし花や音楽や絵画で癒されたり元気づけられたりするならば、それらは協労的行動を提供してくれていると考えられる。 S.L. セルフのプロセス・リーダーは自分自身である。個人目標を掲げることから S.L. セルフは始まる。目標には、数年後こうなりたいという中長期目標や数ヶ月の間にこうなりたいという短期目標や、明日こうなりたいという超短期目標などがあり、究極的には自分の人生で何をしたいかも目標になりうる。
S.L. セルフは、「なりたい自分を創る」ための「行動のきっかけ」として活用することができる。たとえば、何年何月頃にこうなりたい、こうありたいという自分があったら、まず、その自分を目標にして、現在の自分のレディネスを診断するのである。現在の自分のレディネスを診断したら、目標に到達するまでの不足している能力や意欲がわかるので、必要なコンテンツの補強、つまり能力向上や意欲高揚のために必要なコンテンツ・リーダーはだれで、あるいは何で、そのコンテンツ・リーダーからなにを得られるのかを考える。もし、コンテンツ・リーダーがだれ(何)で、そのコンテンツ・リーダーからどのような指示的行動や協労的行動を受けようとしているのかがわかれば、指示待ちや受身の態勢ではなく、必要なものを必要なだけ依頼するという自律的な対応ができる。
図表 5 :プロセス・リーダーとコンテンツ・リーダー
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