新しいリーダーシップ研究の可能性

いままでのリーダーシップ研究だけでは、現代の、あるいはこれからのリーダーシップを十分に説明できないのではないかと思い、所属する組織にこだわらないリーダーシップを研究するようになりました。わたし自身も、ひとつの組織にしばられない、むしろ「自分」を中心にすえた複数の組織作りをしたいと思っているので、そういったなかでのリーダーシップ研究に関心があります。


【2005年「組織マネジメント戦略」慶応義塾ビジネススクール編、高木晴夫監修、有斐閣アルマ、第9章「リーダーシップの発揮」より抜粋】

●事業創造のリーダーシップ

IT革命によって、大企業や大資本でなくとも、事業創造が可能になった。産業革命後の20世紀でのリーダーシップは、モノづくりを基盤とした官僚制階層組織を運営するためのリーダーシップであった。しかし、IT革命後の21世紀のリーダーシップは、ネットワークのなかを縦横無尽に走る情報の中から、必要な情報を経営資源として活用し、それによって利益を生むシステムを創り出すリーダーシップである。

これは、既存の情報や他人がもっている情報を、自分の目的にかなうよう組織化し、新しく組み立て直すことである。これによって、新しい商品やサービスを創り出したり、新しい経営システムや生産システムやマーケティングシステムなど、新しい知識を創り出すことになる。このようにしてできあがった事業は、従来のような官僚制階層組織を必要としない。ネットワークに点在するメンバーたちが、事業に共鳴し、事業参画能力を持ち、事業からのリターンを期待している場合に、集まり組織化される。

これまでのリーダーシップ理論によって、リーダーとなる人物に要求される条件や、リーダーシップが有効に機能する状況特性(組織や職場の特性)などが明らかになり、組織や職場の成果や満足を得るための方法論が明らかになってきた。しかし、IT化が急速に進んだグローバルなネットワークという不確実性や多様性の高い環境においても、このような考え方で同じように説明できるだろうか。

IT化されたネットワーク社会のリーダーシップ研究は、ほとんど行われていない。現代の事業創造の成功者として研究されているリーダーたちは、シリコンバレーなどの新しい市場を開拓した企業家(アントレプレナー)たちである。コッター(Kotter [1988])は、リーダーシップとアントレプレナーシップを比較して、次のように述べている。(図略)

この比較では、企業家は行動的で自分勝手な個人主義者ととらえられ、リーダーは組織化を実現し利益を達成する経営者ととらえられている。一方で、ネットワークにおいて新しく事業創造するという意味での企業家は、コッターが定義する組織化を実現し利益を達成する経営者、すなわちリーダーと考えることができる。その意味では、現代のリーダーシップ研究は企業家研究に学ぶべきところがあると考えられる。

アマール・ビデ(Bhide [2000])は、100社の企業家を対象に行った調査で、企業家を「投資」、「リターン」、「不確実性」の3次元で分析し、5類型に分類した。その中で、事業創造に成功し、組織化を果たし、継続的な利益を得ている企業家、すなわち、大組織を築き上げるような企業家は、「革新的企業家」と呼ばれた。熾烈な競争市場で勝ち残り、長期的に生き残る企業家である。このような革新的企業家になるためには、投資家たちを強烈に惹きつけるようなビジョン、不屈の精神、カリスマのような並はずれた能力をもたなければならないという。

中略

IT技術が飛躍的に進歩した21世紀は、官僚的階層組織を重厚長大で動きのにぶい組織とし、無用の長物にしてしまった。ITによるネットワーク化のおかげで、物理的に大きな資本がなくとも、あらゆるネットワークから事業資源を獲得できる方法が提供されたといわれる(Saxenian [1994], p.57)。ネットワーク社会では、大企業や大資本でなくとも、企業家本人に信用があれば、多くの事業資源を惹きつけることができる(Bhide [2000], p.239)。もちろん、事業アイディアや事業計画も重要であるが、資源提供者は、特にスタートアップの企業家に対しては、ネットワークとの関わりを示す信用の方を重視することがわかった。このことは、事業創造のリーダーシップには、従来のリーダーシップ研究が依拠してきた階層的権威ではなく、ネットワークとの関わりを示す信用が欠かせないことを物語っている(山本 [2001], p.47-52)。

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