2010/07/01

チームのための状況対応リーダーシップ®

状況対応リーダーシップ®(S.L.理論®)では、チームの目標達成、成長、および変革ついて、チームレディネスを基準にしています。

チームの目標達成 

チームの目標達成には、目標に対して、チームがどれだけ「準備できているか(ready)」というチームレディネスを知ることが出発点となります。チームレディネスが分かれば、目標達成までに、そのチームに何が必要かがわかります。その必要なものを提供することがチームリーダーシップになります。

チームの成長

チームの成長とは、チームレディネスが向上することです。チームレディネスの基準は、目標なので、チームレディネスが上がるということは、目標達成に近づくということであり、低レディネス状態では「準備できていなかった能力や意欲」を得たことになります。

*状況対応リーダーシップ®(S.L.理論®)では、レディネスを能力と意欲によって成り立つととらえています。  


チームの変革

現代求められている変革は、過去の延長線上ではなく、新しい価値を創造する不連続の変化であり、チームレディネスの連続的な成長だけでは、過去を踏襲していることになります。そこで、チームレディネスの成長を超える新しい考えが必要になります。


チームの変革を考えるにあたって、チームレディネスの目標達成と成長を図表でとらえてみます。

*チーム(グループ)レディネスの詳細は、「行動科学の展開、入門から応用へ」生産性出版をご参照ください。


チームレディネス育成によるチームビルディングと成長 

チームレディネスは、チームのまとまりがない状態をR1、徐々にまとまりつつある状態をR2,R3,そして目標に向かって一丸となって進んでいる状態をR4として示されています。チームレディネスは目標達成のための役割や責任の明確化されるにしたがって、またチーム内コミュニケーション量や質が高くなるにしたがって高くなります。

チームレディネスは、「意思決定」と「コミュニケーション」という2つの軸によって定義されます。 
これを表にすると、次のようになります。


リーダー行動

S4
自律化
S3
参画化
S2
明確化
S1
規制化

チーム
レディネス


R4

R3

R2

R1

意思決定



目標設定や役割責任決定をメンバーに任せ、リーダーは見守る。
目標設定や役割責任決定にメンバーを参加させる。
役割責任をメンバーと調整し、リーダーが最終決定する。
目標や役割責任をメンバーに伝える。

コミュニケーション


中心はなく、メンバー間で多方向、リーダーは外部にむけて
中心はなく、リーダーやメンバー間で多方向
中心があるが、対メンバー、メンバー間で多方向
中心からメンバーに向けて一方向

ここまでは、従来の状況対応リーダーシップ®(S.L.理論®)の考え方であり、現状のチームレディネスに対応する最適なリーダー行動を選ぶことになります。

すでに目標が定められている場合には、従来のチームリーダーシップは有効に機能していました。与えられた目標にしたがって、リーダーは仕事を配分したり、相手のレディネスにあわせて適切な指導・支援を行うというように。

しかし、めまぐるしく変化し不確定要素が多い状況では、目標は流動的で、従来のチームリーダーシップでは対応しきれません。常に、新しくなにかを創り出さなければならない、めまぐるしい変化に対応しなければならない、リーダーひとりではなくメンバー全員が創造活動に携わらなくてはならないという、新しいリーダーシップが必要になります。


チームレディネスを成長させるコーチング

そこで、チームメンバー全員に、自ら「気づきや新しい発見」を促すリーダーシップとして、チームレディネスを成長させるコーチングを考えてみます。

リーダーシップの定義は「働きかけること」ですから、「未来の行動に働きかけるリーダーシップ」として、S1からS4について、次の4つのスタイルが考えられます。
  • S1: フィードバック(Feedback)にかかわる働きかけ 
  • S2: アジェンダ(Agenda)にかかわる働きかけ 
  • S3: フォローアップ(Follow-up)にかかわる働きかけ 
  • S4: フィードフォワード(Feedforward)にかかわる働きかけ 
*「コーチングの神様が教える「できる人」の法則」(マーシャル・ゴールドスミス)、状況対応リーダーシップ®(S.L.理論®)、および「自分アジェンダを引き出すコーチング」(網あづさ)を参考


S1:フィードバック

「気づきや新しい発見」を促す第一ステップとして 現状を変えたいという認識が必要です。フィードバックは、現状に気づかせるための働きかけです。現状はどうですかと聞くこともできるし、現状はデータによればこうですと事実で示すこともできます。この問いかけや事実提示によって、現状を知ることができます。

S2:アジェンダ

「変わらなければならない」と気づいたら、次に必要な働きかけは、どのように変わるかという、内容にかかわることです。変わるためのイメージや希望を、内面を探索することによって感じ、気づくことが目的ですが、これは「自分アジェンダ」を探るための働きかけです。変わるべきアジェンダは、自分の内面を深く掘り下げるのですが、掘り下げれば下げるほど、自分ひとりで決めるのではなく、 周囲の人々や環境との関係によって決まると感じてきます。独りよがりの変化ではなく、自分を取り巻く人々や環境がどのような自分を求めているのか、その求められている変化を遂げることが、周囲や環境を満足・充実させ、ひいては自分自身をもっとも幸福にさせる変化となります。

S3:フォローアップ

変化の必要性に気づき、どのように変化すべきかわかったら、次は実行あるのみです。しかし、人間や組織には現状を現状のままにしておきたいという慣性があり、慣性に逆らって変化を推し進めることは困難です。そこで、「決めたことをやっていますか?」、「これくらい進んでいますよ」、「決めた方向に進んでいますか?」など進捗状況を客観的に教えてもらったり、自問自答することが役立ちます。こういった進捗状況の確認や支援がフォローアップになります。


S4:フィードフォワード

こうして、自分が決めた変化を行動に移し、進み始めます。もし、新たな変化が必要であれば、それに気づくための働きかけがフィードフォワードです。客観的な視点でなんらかのヒントをもらうこともできますし、自分で探ることもできます。フィードフォワードの問いかけにより、さらなる変化や、ひとりよがりではない変化を見つけ出すことができます。